森の住人と遊んだひと時♪

森の道をオフロードバイクで走ったいると、遠目に道の上でまったりとしているキタキツネが目に入った。 スピードを最大限に落とし、そろそろと近づいていく。2頭居た!
https://youtu.be/hi9fmygKRlA
一頭は寝そべる様な格好でじっとしていて、もう一頭は傍らの一頭にじゃれつく様に毛繕いしている。 何度か進んでは停止、これを繰り返しながら5メートル位まで近づいた。逃げない。 時折こっちを気にするようだが、自分たちのマッタリさを楽しんでいるようで、こちらは眼中にないと決め込んでいるようである。
こちらも先に進まないと家に帰られない。お客様のチェックイン時間も迫っているのだ。

その内、一頭が道の小脇の茂みの中に逃げ込んだ。もう一頭も続こうとしたが、茂みに入るのをやめて、初めてボクの事を注視した。 「おいっ、キミも森の中に逃げていいよ」と声をかけても黙って此方を見ているままだ。しばらくキツネ相手にいろんな言葉をかけるも、自らの毛繕いを始めたり、仕舞いには顎を土の上に乗せ、こちらに視線を送りつつ、そして寝そべってしまった。 自然の中でほとんど人間が来ることのないこの場所で、このボクを敵視しない態度に、このキツネが無性に愛おしくなった。 さりとて刻々と時は過ぎる。
ボクは1メートル横を過ぎようとすると、件のキツネはもう一頭のいる茂みの方に去った。 安堵感と共になんか一抹の寂しさを抱えながらバイクを進める。

宿のある場所のだいぶ近くまで進むと道の先に一本の大木が倒れていて、完全に道を塞いでいる。倒木の横に逃げ道はない。仕方なく踵を返して、来た道をまた戻ると、さっきのキツネが道の上で待っていて、「ほうら、また戻って来たでしょ」と言われたような気がした。

キツネはボクの周りで、木の上を歩いたり、その先にある何かを見つけるとパクッと飲み込んだり、はたまた此処に入り込んだ先人が落として行った古くなった軍手のようなものと遊び始めた。「ほうら、こうやってアンタ方が落としていったもの、遊んでやってあげてるんだ」と言わんばかりに見せつけてくれる。
暫くキツネと遊んだ後(遊ばれた後)、「それじゃ👋」とキツネに手を振りバイクで走り始めると、バックミラーに、走って追いかけくるキツネが映った。30メートル位走ったが、バイクを停めてエンジンを切った。
数秒後キツネは1メートル先までやって来ると、黙ってボクの顔を見た後、茂みの中に消えた。「また遊ぼうね」と言われた気がした。

ほとんど人も入らないあの森の道で出会ったあのキツネは、エサ欲しさに寄ってくる所謂オネダリキツネなんかじゃない。 森の中に入り込んでしまったボクを、ホスピタリティ溢れたおもてなしで迎え入れてくれた生粋の森の住人だ! 今度、同じ場所に行った時はまた会えるかな‥?
きっと会えない、ような気がする。

満15歳を過ぎた『きらの宿すばる』

旭川から弟子屈町美留和に移り住んだ久郷夫婦とゴールデンレトリーバーのマッシュ。2009年5月に二人と一頭で、きらの宿すばるをスタートさせました。

宿を開設してから直ぐにお客様がいらっしゃるという事はなく、夫婦二人して「三年経ってダメだったら、その時はさっぱり宿業を諦めようね」と約束していました。二年経っても芳しくない日が続く毎日で、「いよいよ後一年で終わりだね・・」とよく顔を見合わせたものでした。
しかし、当時はまだハシリであったかもしれない予約サイトに登録すると、ポツポツと予約が入るようになり、お越しいただく一人一人のお客様を大事にお迎えすることに全ての気持を注いできた甲斐もあって、リピートしてくださるお客様も増えてきて、何とか三年をこえて続き、今に至ってます。

看板犬のマッシュも頑張りました。某民放テレビの朝の番組の「きょうのワンコ」というコーナーに出演すると、マッシュ目当てにいらっしゃる愛犬家のゲストさんも増えていきました。2017年7月に虹の橋を渡った彼は、今は星となって私たちの事を応援してくれていると思います。

15年間、無我夢中で頑張ってきた私たちだけども、本当に大勢の人に助けられて支えてもらって此処までやって来れました。立ち上げの時からホームページを作成管理してくださった人がいたり、PR動画を作ろうと同級生が駆けつけてくれたり、宿主がスキーや自転車のイベントをやろうと思い立った時に気持ちよく手助けしてしてくださった方々、大雪に見舞われた時からずっと除雪にタイヤショベルを出してくれたり・・
恩を受けた方を思い出すと、枚挙にいとまがありません。
近くの方から遠くの方まで、本当にありがとうございました。

なんか・・こう振り返って書いたものをお読みになられると、これですばるを辞めてしまうのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんね苦笑。

いいえ、まだ辞めません!宿主夫婦も多少体のあちこちが痛むこともありますが、もう少し頑張らせてください。
宿を続けることで、誰か彼かの幸せに繋がると感じるようになった時、はじめて宿業が私たちの生業となる気がいたします。
いつまでやれるかは分かりませんが、その日まで一日一日を大事にして、頑張っていこうと思っています。

これからも『きらの宿すばる』をどうぞよろしくお願いいたします。